今回は、月給者の給与が最低賃金を下回らないか心配している医院からのご相談です。
今年入職した正職員には、月額18万円(基本給:月額16万円、皆勤手当:月額1万円、通勤手当:月額1万円)の給与を支給しています。今年度は最低賃金が大幅に引上げとなったと聞きました。そのため、月給者の給与が最低賃金を下回るかもしれないと心配しています。
月給者も時給者と同様に最低賃金額以上の給与を支給する必要があります。月額で支給する給与を、所定労働時間に基づき時給に換算し、最低賃金と比較します。なお、支給している給与のうち皆勤手当、通勤手当等については、最低賃金の確認において除外して計算する必要があります。
最低賃金制度とは、法律に基づき国が賃金の最低限度額を定め、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとするものです。最低限度額であるため、最低賃金額を下回る給与と気づかずに支払っていたときはもちろん、仮に医院と職員で最低賃金を下回る賃金額での支払いに合意したとしても無効となり、最低賃金額と同額の賃金を支払うことになります。
月給制で支給している給与においては、毎月支払われる給与が最低賃金を確認するときの対象となります。その際、次の給与については除外して確認する必要があります。
- 結婚祝い金など、臨時に支払われるもの
- 賞与など、1ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの
- 残業代など、所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われるもの
- 休日出勤手当など、所定労働日以外の日の労働に対して支払われるもの
- 深夜割増手当など、深夜の労働に対して支払われるもの(割増分のみ)
その他、毎月支払われる給与であっても、精皆勤手当、通勤手当および家族手当も除外して計算することになっています。
月給者の給与が最低賃金額以上の金額で支払われているかの確認は、[月給÷1ヶ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)]で行います。1ヶ月の平均所定労働時間は、[1年間の所定労働時間÷12ヶ月]で計算することになっており、例えば、1日8時間、年間の所定労働日数240日の場合、1ヶ月の平均所定労働時間は、[8時間×240日÷12ヶ月=160時間]となります。質問のケースに当てはめると、[(18万円-2万円(皆勤手当および通勤手当))÷160時間=1,000円]となり、これと最低賃金を比較します。
月給者の給与は時給額に換算して比較する必要があるため、確認がもれやすく注意が必要です。大幅な引上げとなったこの機会に、最低賃金を下回っていないかを確認しておきましょう。
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