今回は、採用前に前職について情報収集したい医院からのご相談です。
現在、正職員を募集しているのですが、当院が希望しているような人材からの応募がなかなかありません。そのような中、条件は合致するものの、転職歴が多い人から応募がありました。履歴書や面接で前職の仕事の内容や退職理由を確認する予定ではありますが、できれば直接、以前勤務していた職場に尋ねることはできないかと考えています。このような対応は問題ないでしょうか。
前職の情報収集方法の一つとして、医院から直接、以前勤務していた職場に問い合わせることも考えられますが、個人情報でもあるため提供される可能性は低く、また、望ましい対応とはいえません。前職の情報を収集したいのであれば、応募者から以前勤務していた職場に「退職証明書」を発行してもらい、その内容を確認するという方法があります。
1.前職の業務の内容や退職理由の確認
求人に応募があった場合、履歴書や職務経歴書を提出してもらい、筆記試験や面接試験を経て採用を決めるのが一般的です。特段の問題がなければ、そのまま内定とし、勤務開始となります。
一方で、例えば転職回数が多い人や、明確な理由なく前職を退職し応募までの期間が長い人については、前職での担当業務や退職理由も気になります。前の勤務先からの情報も欲しいところ……。この場合は、応募者に「退職証明書」の提出を求めるとよいでしょう。
2.退職証明書の交付義務
退職証明書は、労働者が退職したときに、その勤務先が必要事項を証明するために交付する書類です。退職者から請求があった場合に、遅滞なく交付することが義務付けられています(労働基準法第22条)。
退職証明書には、次の事項のうち、退職者が請求した事項のみが記載されます。
- 使用期間
- 業務の種類
- 当該事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)
この退職証明書を応募者に提出してもらうことで、履歴書等の提出書類との齟齬がないか確認できます。また、採用したい人材かどうかの判断材料にもなります。応募者には、どの記載事項を必要としているのかを具体的に示した上で、提出を求めるとよいでしょう。
なお、退職証明書の交付を請求できるのは、退職した本人のみで、退職後2年間となっています。つまり、貴院から直接、前の職場に交付を依頼することはできません。応募者に「前職の勤務先に退職証明書の交付を請求し、当院に提出してください」と依頼して取り寄せるようにしましょう。
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