昨年12月17日に令和6年度補正予算が可決・成立しました。2回にわたり、主要なポイントをまとめたいと思います。
今回は、医療機関の経営に影響を与える施策をご案内します。
1.生産性向上・職場環境整備支援
賃上げ等のための生産性向上の取組を支援し、医療人材の確保・定着を図る予算として、828億円が組まれました。
具体的には、生産性向上に資する設備導入等の取組を進める医療機関等に対して、ICT機器の導入やタスクシフトの推進などによる業務の効率化に要する経費相当分の給付金が支給されます。交付額は、診療所(医科・歯科)や訪問看護ステーションが1施設あたり18万円、病院・有床診療所は1病床あたり4万円とされています。なお、この給付金の支給対象は、ベースアップ評価料を算定している機関に限定されていることに、注意が必要です。
2.経営状況の急変等を踏まえた支援
患者数の減少や物価高騰などにより経営が厳しい医療機関に対する支援として、428億円の予算が計上されています。
まず、患者減少等により経営状況の急変に直面している医療機関への支援として、病床数の適正化を進めるにあたって生じる診療体制の変更や雇用等の負担に対し、1病床あたり4,104千円の交付が計画されています。
また、物価高騰等の経済状況の変化によって施設整備等が困難な病院等に対しては、国庫補助事業の交付対象となる医療機関等を対象に、施設整備に必要な給付金が支給される予定です。
3.産科・小児科医療確保事業
周産期医療体制や地域の小児医療体制確保に対し、55億円の予算が組まれました。分娩取扱施設が少ない地域や、小児医療の拠点となる施設に対して、急激な患者数の減少等を踏まえた支援が行われます。
4.医師偏在対策としての診療所承継・開業支援・広域マッチング事業
医師少数地域の医療機関支援は、今後ますます重点的に実施されるものと思われます。補正予算でも、重点医師偏在対策支援区域(仮称)における診療所の承継や開業支援について、102億円が計上されました。施設や設備の整備、一定期間の定着支援等が実施される見込みです。
また、同じく医師偏在の是正を目的に、中堅・シニア世代等の医師を対象に、広域マッチング支援にも取り組むことが、補正予算でも示されています。医師不足地域での医療に関心がある医師の掘り起こしやキャリアコンサルティング、教育から、マッチングとその後の定着支援等について、財政支援が行われます。
ここでは重点課題や予算の大きい施策をご案内しましたが、他にもさまざまな補正予算により施策が講じられます。補正予算における医療関連の施策をまとめた資料が、厚生労働省の社会保障審議会医療部会にて公開されていますので、下記サイトにてご確認ください。
[参考]
厚生労働省「令和6年度補正予算について(報告)」
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