医療費の地域差、西高東低の傾向
令和3年度の医療費(電算処理分)の地域差分析が、厚生労働省より公表されました。
これは、都道府県や市町村別に医療費水準の地域差を速報としてまとめたもので、毎年発表されています。地域ごとの人口の年齢構成の相違が医療費の地域差に大きく影響するため、これを補正した「1人当たり年齢調整後医療費」と、これを全国平均の1人当たり医療費で指数化した「地域差指数」を用いて分析が行われています。
ここでは「全制度計の地域差」の都道府県別の結果を見ていきます。
1人当たり年齢調整後医療費は、北海道と西日本が高く、東日本が低い傾向にあります。下図が示すとおり、この傾向は特に入院において強く現れています。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.13
地域差への寄与を診療種別に、年齢調整後医療費の高い都道府県から順に左から並べたものが、下グラフです。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.14
寄与の大きいものを明確にするため、各都道府県の地域差指数の全国平均からの乖離(地域差指数-1)を診療種別の寄与度に分解したグラフが、下図になります。縦軸は地域差指数になります。これを見ると、入院の寄与度が大きく、歯科の寄与度が小さいことが分かります。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.14
同様に、他の要素でも寄与度を分解して分析します。
年齢階級別では、70歳以上の寄与度が比較的大きくなりました。この傾向は、入院、入院外、歯科のいずれの診療種別でも見られました。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.15
疾病分類別では、循環器系の疾患と精神及び行動の寄与度が高くなっています。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.16
最後に、三要素別に示したグラフが以下になります。上のグラフは受診率(水色)、1件当たり日数(オレンジ色)、1日当たり医療費(黄緑色)の3要素、下のグラフが推計新規入院発生率(水色)、推計平均在院日数(オレンジ色)、1日当たり医療費(黄緑色)の3要素を表しています。
出典:厚生労働省「令和3年度(電算処理分)全体版」p.20
これによると、地域差指数の高い都道府県では、受診率と1件当たり日数の寄与度、推計新規入院発生率、推計平均在院日数がプラスになる一方で、1日当たり医療費の寄与度がマイナスになる傾向にあることが分かります。
この分析では、今回ご紹介した全制度計の統計の他に、市町村国民健康保険の地域差、後期高齢者医療制度の地域差の分析も見ることができます。詳細は以下のホームページでご確認ください。
参考:
厚生労働省「医療費の地域差分析」
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