2024年度の診療報酬改定では賃上げ対応分0.61%分が、介護報酬改定では介護職員の処遇改善分0.98%が措置され、処遇改善加算の一本化なども検討されています。
一方で税制面では、昨年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」にて賃上げ促進税制の改正が示されています。今回は、中小企業向けの賃上げ促進税制について、改正内容を確認します。
中小企業向けの賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業等が、一定の要件を満たしたうえで、前年度より給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主の場合は所得税)から税額控除できる制度です。
今回の大綱により、教育訓練の推進や子育て両立支援、女性活躍推進の視点から、控除率を上乗せする拡充が予定されています。さらに、次の2つの改正も盛り込まれました。
1.看護職員処遇改善評価料・介護職員処遇改善加算等による賃上げも税額控除の対象に
減税対象となる給与等支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に看護職員処遇改善評価料や介護職員処遇改善加算等が含まれないこととなります。これにより、これらを財源とした賃上げ分についても、税額控除の対象とすることができるようになります。
2.控除限度超過額、5年間繰越可能に
賃上げにより受けられる税額控除額のうち、当期に控除しきれなかった額について、5年間の繰越ができるようになります。これにより、赤字の中で賃上げを実施した場合でも、翌期以降の黒字で税額控除でき、報われる可能性が高まります。
与党から出された「令和6年度税制改正大綱」の発表後、日本医師会の松本吉郎会長は記者会見で「恩恵を受ける医療機関がほぼないことなどの問題が解消された」と一定の評価を示しました。
また、介護職員処遇改善加算は賃上げの直接的な原資であり、取得率は9割を超えていますので、この加算を受けて行う賃上げが、上記1.の改正によって税額控除の対象となることは、福祉施設にとって朗報といえます。
これらのことから今回の改正により、同制度の恩恵を受けることができる医療機関や福祉施設等の範囲が大きく拡大されるものと期待できます。
上記改正は、2024年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主は2025年から2027年まで)に適用される予定です。なお、本稿は令和6年度税制改正の大綱に基づき作成しております。最終的な改正内容は、改正法令の公布後に、官報等でご確認ください。
参考:
財務省「令和6年度税制改正の大綱」
日本医師会「令和6年度診療報酬改定について(2023年12月20日三師会合同記者会見)」
厚生労働省「介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況」
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