いわゆる「年収の壁」問題に対応すべく、パートタイマー等(以下、パート等)が社会保険に加入しても手取り収入が減らないよう取組をする事業主に、新しい支援策が始まっています。
厚生労働省より公表された「年収の壁・支援強化パッケージ」の中で、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。
扶養の範囲内で働くパート等には、社会保険料の負担が生じる年収の壁は大きな存在です。このコースでは、この壁を超え社会保険(健康保険(医師国保・歯科医師国保を含む)と厚生年金保険)に加入したパート等に対し、その保険料負担をサポートすべく収入を増加させる事業主を対象に、労働者1人あたり最大50万円の助成金が支給されます。2026年3月末までに新たに社会保険に加入したパート等が対象で、次のメニューがあります。
①手当等支給メニュー
手当(社会保険適用促進手当(※1)等)を支給する等により、収入を増加させる場合。
(※1)パート等が社会保険に加入するにあたりそのパート等の保険料負担を軽減するために、事業主が支給する手当です。新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限に、保険料算定の際、標準報酬月額等に算入しないことができます(最大2年間の時限措置)。
②労働時間延長メニュー
所定労働時間を延長することで社会保険に加入する場合(※2)。
(※2)厚生年金保険の被保険者数101人以上(2024年10月以降は51人以上)の事業所は週20時間以上、それ以外の事業所は週の所定労働時間及び月の所定労働日数が正社員の4分の3以上になった場合に、社会保険の加入対象となります。
注意点もあります。まず、助成金の支給期間終了後の手当や時間の取扱いも視野に入れてご検討ください。また、①の社会保険適用促進手当を一部のパート等に支給することで、それ以外の従業員との間に不均衡が生じるという点にも配慮が必要です。
とはいえ、パート等が年収の壁を気にせずに働けることは、人手不足解消策にもなります。この先も収入が増えることが想定されるパート等については、これを機に社会保険に加入するのも一つの道かもしれません。
参考:
厚生労働省「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」
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