財務省分科会の建議に見る医療財政の見通し
次期診療報酬改定が来年度に控えています。今回はその方向性を占う一つの材料として、財務省の分科会がまとめた建議に、昨今の医療業界を取り巻く情勢がどのように描かれているかに着目したいと思います。
これは財政制度等審議会・財政制度分科会が5月29日に取りまとめたもので、今後の財政運営にあたっての要請がまとめられたものです。
財務省 財政制度等審議会「歴史的転機における財政(令和5年5月29日)」PDF
医療については、p.57以降に記載されています。以下に要点をまとめます。
- 病院の財政状況は、コロナ補助金などにより純資産が事業費用の5%相当規模で増加し、多額の純資産が積み上がっている。賃金・物価高への対応にはこうした資産を活用すべき。
- 医療費は、高齢化や医療の高度化などにより、診療報酬改定の影響を除いても毎年2〜3%増加している。今後も高齢化が続くことから、医療費の増加が見込まれる。
- 看護、介護、保育等の分野における処遇改善は対象となる職員の3%程度の処遇改善が実施されたが、更なる処遇改善を行う場合は、費用の使徒の「見える化」を行い、すべてを国民の負担にまわすのではなく、医療・介護費の中で分配を含めて検討。
- 近年、総患者数は伸びていないが、診療所数は増加の一途。厚生労働省の将来推計では、令和11年頃にマクロで医師需要が均衡し、その後は医師の供給過剰となることが見込まれる。大都市部で医師や診療所が過剰となり、地方では過少となる傾向が続く。例えば診療所の新規開設についても、もう一歩踏み込んだ規制が必要。
- 令和4年度診療報酬改定では、リフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果が、大臣合意では医療費マイナス470億円程度(改定率換算でマイナス0.1%)であったのに対し、業界団体の調査に基づく計算ではマイナス50億円程度(同マイナス0.01%程度)にとどまっている。効果が未達成であるのであれば、年末の診療報酬改定においてその分を差し引くことも検討すべき。
従来の財務省の姿勢のとおり、全体としてプラス改定には消極的なスタンスであることが感じ取れます。
他にも医療機関の経営情報データベースや地域医療構想、医療DXなど、さまざまな課題について言及されています。全文は、以下のホームページにてご覧ください。
参考:
財務省 財政制度等審議会「歴史的転機における財政(令和5年5月29日)」
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