今回は、妊娠中の職員からの軽易な業務への転換希望に関するご相談です。
妊娠中の職員から、妊娠後期に入り、立って行う業務が身体の負担になるということで、座ってできる業務への配置転換をして欲しいという希望がありました。当院では、立って行う業務が多く、本人の希望する座ってできる業務はほとんどありません。本人の希望を、どこまで聞き入れる必要があるのでしょうか。
妊娠中の職員から軽易な業務への転換希望があったときには、医院は転換を行わなければなりません。ただし、新しい業務を用意してまで転換する必要はないため、妊娠中の女性職員が求める内容と、医院が対応できる内容をすりあわせて、対応を決めるとよいでしょう。
1.妊婦の軽易な業務への転換義務
妊娠した女性にとって、前かがみの業務や長時間の立ち業務等は、身体的に負担の大きい業務になります。そのため、妊娠した女性職員から、他の軽易な業務に転換することの請求があった場合、医院は転換させなければなりません(労働基準法第65条第3項)。この際、「軽易な業務」に対する具体的な定めはなく、妊娠中の職員の状況により、個別に判断する必要があります。
なお、妊娠中の女性職員の請求がないにもかかわらず、軽易な業務へ転換させることはできません。職員の体調等に配慮して転換を考える場合には、本人に説明をし、同意を取った上で行う必要があります。
2.実務上の対応
医院に対して、軽易な業務への転換義務はあるものの、軽易な業務がない場合に新たに軽易な業務を作ることまでの義務はないとされています(昭和61年3月20日基発第151号、婦発第69号)。
今回のケースでは、できるだけ座ってできる業務へ転換することを考えるとともに、例えば、近くに椅子を置くことで、立って行う業務の途中でも、適宜、座ることができるような環境を作るなど、医院として対応可能な範囲の配慮を、妊娠中の職員と一緒に考えることがポイントとなります。
妊娠中の状況は個人ごとに千差万別のため、一様な取扱いをすることはできません。軽易な業務への転換は、医師等の指導の有無にかかわらず職員の請求に基づき行うものですが、医師等が記載する「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)を提出してもらうことにより、必要な配慮を検討することも考えられます。
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