今回は、退職した職員から届いた、未払い残業代の請求についての相談です。
先月退職した職員から内容証明の郵便が届きました。内容は、「在職時に受け取っていない残業代があるため、追加で支払って欲しい」というものでした。タイムカードで労働時間を管理し、その記録に従って残業代を支払っているため、未払い残業代はないと認識していますが、どのように対応すればよいのでしょうか?
未払い残業代を主張する根拠を確認し、未払いのものがあれば、追加の支払いが必要になります。今後、同じことが起こらないように、実際の手順を確認し、問題があれば改善しましょう。
1.残業代の請求根拠の確認
まずは退職者に、未払い残業代があると主張している根拠を示してもらいましょう。
例えばタイムカード以外で労働時間が記録されている資料があれば、その資料を送ってもらい、示された資料をもとに、その時間について労働をしていたかを精査します。精査に時間がかかるようであれば、時間の猶予をもらい、回答の日時を伝えます。
なお、未払い残業代の時効は、2020年3月31日までに支払うべきものは2年であり、2020年4月1日以降に支払うものから3年に延長されています。
2.問題が生じやすいケース
未払い残業代が請求される原因には、労働時間管理における説明不足や誤った運用があります。
例えば、始業前に職員が自主的に任意参加の勉強会を開催していたところ、時間の経過とともに強制参加のような勉強会になっており、参加しなければ業務に支障が出てくるようなケースです。勉強会や研修はその内容から、労働に該当するのかを事前に確認し、労働ではないとする場合には、誤解のないように説明することが求められます。
また、36協定で1ヶ月の上限時間を30時間として締結し、この内容を遵守するために残業時間を30時間までしか付けられないと管理者から言われ、タイムカードを打刻し再び業務を行っているということがあります。36協定の内容を遵守することは重要ですが、仮に36協定で締結した時間数を超える残業を行ったときであっても、超えた時間数の残業代の支払いが必要です。
そもそもこのような運用が行われていないかを確認し、運用に問題があれば、適正に労働時間を申告するように職員と管理者に説明を行い、場合によっては36協定で締結している時間数を変更する(長くする)などの対応が求められます。
退職者から未払い残業代の請求があった際、対応を放置しておくと、退職者との関係がこじれ、解決に時間を要することがあります。誠実に対応するとともに、請求に至った原因をみつけ、改善を進めましょう。
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