コロナ禍が長引く中で、経営状況が厳しくなる医療機関もあることでしょう。ここでは、新年度の賃金改定の参考資料として、2020年11月に発表された資料(※)から、2020年の医療機関等の賃金改定に関するデータをみていきます。
上記調査結果から、医療機関等(以下、医療,福祉)の賃金改定状況をまとめると、表1のとおりです。
医療,福祉で2020年に1人平均賃金を引き上げた又は引き上げる(以下、引き上げた)割合は83.7%で、2019年より2.8ポイント減少しました。回答企業全体(以下、全体)と比べると、引き上げた割合は高くなりました。引き下げた又は引き下げる(以下、引き下げた)割合は1.1%に増加しましたが、全体より低い水準です。実施しない割合は6.5%で2019年から0.2ポイント減少しました。全体と比べても低い状況です。未定の割合は8.7%で2.0ポイント増加しています。全体よりも高い水準になっており、賃金改定の実施を決めかねている医療機関等が増加したことがうかがえます。
上記および過去の調査結果から、医療,福祉の1人平均賃金の改定額と改定率の推移をまとめると、表2のとおりです。
2020年の改定額は3,198円で、2019年に比べて600円の減少となりました。改定率は1.5%で2013年以来の割合です。なお、全体では2020年の1人平均賃金改定額は4,940円、改定率は1.7%と、医療,福祉より高い水準になっています。
コロナ禍の状況が続いていることから、2021年はさらに厳しい賃金改定となる医療機関が増えることも考えられます。
(※)厚生労働省「令和2年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」
一定の産業に属する会社組織の民営企業を調査対象に、産業・企業規模別に抽出した3,590社を調査客体として2020年7月~8月に行われた調査です。ここで紹介したデータは、常用労働者100人以上の企業(調査客体企業数は3,258社、有効回答企業数は1,670社)について集計したものです。数値は四捨五入の関係で100にならない場合があります。
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