次期診療報酬改定、財務省は「躊躇なくマイナス改定すべき」
来春に予定されている令和4年度診療報酬改定について、厚生労働省を中心に具体的な議論が進められています。
これと同時並行で、財務省の財政制度分科会においても議題に上がっています。
11月8日に行われた同分科会では、財務省より「躊躇なくマイナス改定すべき」との意見が示されました。
こう判断するのに至った理由について、財務省は以下のように説明しています。
- 診療報酬(本体)については、2002年度改定、2006年度改定を除き、いわゆる「プラス改定」が続いてきた。その結果、2000年を起点として考えた場合の機械的な計算では、診療報酬改定以外の高齢化等の要因により年平均伸び率1.6%で増加してきた診療報酬(本体)の医療費について、診療報酬(本体)の改定によりあえて年平均伸び率0.2%を上積みしてきた計算になる。
- 診療報酬(本体)の改定について、仮に「マイナス改定」が続いてきたとしても、2年に1度の診療報酬(本体)の改定率が平均▲3.2%を下回らない限り、理論上は、なお残る高齢化等による市場の拡大から医療機関等が収入増加を享受することが可能であったことになる。この2年に1度の診療報酬(本体)改定率のマイナスが平均▲0.8%(年平均▲0.4%)であったとしても、人口減少も加味した高齢化要因による市場の拡大(平均伸び率1.2%)が維持されるはずであった。しかし現実には、診療報酬(本体)改定のマイナスは2002年度の▲1.3%、2006年度の▲1.36%のみで、「マイナス」どころか「プラス」の改定が続いてきた。
- 診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の「マイナス改定」を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない。
- 拡大する市場の中での分配をいかに医療従事者の処遇改善など必要な課題に振り向けていくかの観点も含め、まずは改定前の診療報酬(本体)の伸びがどのような水準かということを出発点として改定の議論を行うことが適当であり、そこが高止まりしているのであれば、躊躇なく「マイナス改定」をすべきである。そうしたプロセス抜きに、診療報酬(本体)の改定率を論う意義は乏しい。
この他にも、薬価改定との関係や、令和4年度予算の概算要求の内容にも触れ、これまでの診療報酬改定が拠り所としてきた「論拠」に対抗する意見が展開され、また、令和3年度については補助金収入もアクセルとなり、「医療機関の経営実態は近年になく好調」との見解を示しています。
診療報酬改定は、厚生労働省の社会保障審議会で基本方針が定められ、内閣が予算編成の過程において全体の改定率を決定します。それを踏まえ、厚生労働省の中央社会保険医療協議会が具体的な診療報酬点数を審議、決定します。
今回もこの流れに沿って進めば、12月の予算案の編成過程において、財務省と厚生労働省による大臣折衝の末に、改定率が最終調整されると見込まれます。今回明示された財務省の意見が最終決定にどう影響し、どこに着地するのか、目が離せません。
参考:
財務省「財政制度分科会(令和3年11月8日開催)資料一覧」
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