厚生労働省が5月20日に開催したオンラインセミナーより、ベースアップ評価料についてご案内します。
今回は、セミナーの中盤部分、「ベースアップ評価料、届出にあたってのポイント解説」として、日本医師会の長島常任理事と川原経営総合センターの薄井課長による解説の内容です。動画(※)では、開始21分30秒あたりからスタートします。
冒頭で長島先生より、「賃上げをするために、このベースアップ評価料をできるだけ多くの医療機関に算定していただきたい」とありました。その上で、評価料や届出で分かりにくい点を、対話形式で解説しています。
主な内容について、概要をQ&Aにまとめました。
- 問:対象とならない「専ら事務作業を行う者」とは?
- 答:医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く。つまり、事務作業だけでなく、看護補助など患者のサポートを通じて医療に従事する業務を行う方は、対象職員に含まれる。
- 問:賃金は、どう捉えたらよい?
- 答:「給与総額」と「基本給等」、2つの概念を区別して理解することが重要。
- 問:給与総額とは?
- 答:基本給等+決まって毎月支払われる手当+賞与+法定福利費の事業主負担分、で求める。8区分あるベースアップ評価料Ⅱや165区分ある入院ベースアップ評価料がどの区分になるかを決定する際に用いる。
- 問:基本給等とは?
- 答:賃金改善計画書で登場する概念。ベースアップ評価料を充当できる対象となる賃金の累計。ベースアップ評価料を対象外職員の賃上げに使ってよいかどうかの判定にも用いられる。
- 問:どうやって判定されるの?
- 答:業績給等の変動するものには、ベースアップ評価料を充てることはできない。対象職員の基本給等の2.5%以上の賃上げが達成できる場合、それを超える部分は専ら事務作業を行う者等、対象職員以外の賃上げにも使うことができる。
- 問:給与総額に含まれる「法定福利費の事業主負担分」とは?
- 答:健康保険料や厚生年金保険料等事業主負担分も、ベースアップ評価料の算定上、給与総額に含まれる。便宜的に一律16.5%として計上してよいことが、厚生労働省のQ&Aで示されている。
- 問:ベースアップ評価料による賃金改善分に、「決まって毎月支払われる手当」は含まれる?
- 答:含まれる。よって、ベースアップ手当を作って賃上げを行うことも可能。この場合、基本給等に準じ、毎月業績に変動しない形で一定額を支払う必要あり。ベースアップ手当は名目が分かりやすく、効果的な財源管理の方法でもあると思う。
- ポイント:
基本給等と連動して引き上がる部分もベースアップ評価料の賃金改善に含めることができるが、ベースアップ評価料の全額を基本給や毎月決まって支払う手当のみに充ててしまうと、基本給に連動して上がる部分は医療機関の持ち出しで上げるということになる。そのため、賞与のうち、基本給等に連動する部分や法定福利費の事業主負担分等も考慮した上で、賃金改善の計画を立てるとよい。 - 問:届出期間が延長されたと聞いたが?
- 答:ベースアップ評価料Ⅰの届出期間は延長されたが、Ⅱは延長されていないので注意。
- ポイント:
ベースアップ評価料Ⅰの算定だけでは1.2%の賃上げにしかならない場合に、ベースアップ評価料Ⅱが算定できるが、算定できるかどうかは、届出の記入を進めないと分からない。まずは自院がベースアップ評価料Ⅱの対象になるかどうかを確認いただければ。7月1日からベースアップ評価料Ⅰを算定し、7月以降に改めてベースアップ評価料Ⅱを算定することも選択肢になる。
最後に長島先生より、
「他の産業で賃上げが続く中、医療機関も賃上げをしなければ人材流出を止められず、また、新たに人を雇うことも難しい状況に。人材確保のために賃上げは必須。本来賃上げの費用はすべて医療費の持ち出しになるところ、ベースアップ評価料を算定すれば、その分持ち出しが減ることになる。ぜひ積極的に算定をご検討いただきたい。」
との旨の発言がありました。
同セミナーの視聴とレジュメは、以下のサイトよりアクセスいただけます。
(※)厚生労働省「診療報酬オンラインセミナー(2024/5/20開催)」
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