2024年度に2.5%、2025年度に2.0%の介護職員の賃金ベースアップを目標に、税制では賃上げ税制が、介護報酬改定では処遇改善加算のリニューアルが実施されます。
今回は、新体系の全体像と、現行制度からの移行について整理します。
■今年度は、上位区分を目指す準備期間
今回の改定により、従前の3加算(処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等加算)が一本化され、加算率も引き上げられます。新たな介護職員等処遇改善加算(以下、新加算)はⅠからⅣの4区分があり、算定要件の到達度により区分が決定されます。
新加算は6月から始まりますが、より上位の区分が取得できるよう、完全移行は2025年度からとし、2024年度中はそのための準備期間として、次の1.と2.の後押し措置が行われます。
1.すぐ移行できないときのための「新加算Ⅴ」
新加算Ⅰ~Ⅳにすぐに移行できない事業者を対象に、2025年3月までの時限措置として、新加算Ⅴ(加算率22.1~7.6%、14段階)が、設置されます。
加算Ⅴは、従前の3加算による加算率に今改定による加算率引上げ分を上乗せしており、2024年度は必ず加算率が上がるように設計されています。
2.各算定要件にも経過措置
新加算の算定要件の一部に経過措置が設けられています(下表の※1~6)。
新加算の算定には、①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件の3種類の要件を満たす必要があります。
満たす必要がある新加算区分→ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | |
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①キャリアパス要件 | 要件Ⅰ 任用要件・賃金体系(※1) | ● | ● | ● | ● |
要件Ⅱ 研修の実施等(※1) | ● | ● | ● | ● | |
要件Ⅲ 昇給の仕組み(※1) | ● | ● | ● | ||
要件Ⅳ 改善後の賃金額(※2) | ● | ● | |||
要件Ⅴ 介護福祉士等の配置 | ● | ||||
②月額賃金改善要件 | 要件Ⅰ 新加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上を月給の改善に充てる(※3) | ● | ● | ● | ● |
要件Ⅱ 前年度と比較し、今改定前のベースアップ等加算相当の加算額の2/3以上の新たな基本給等の改善を実施(※4) | ● | ● | ● | ● | |
③職場環境等要件 | 6区分ごとにそれぞれ2つ以上取組、かつその取組の具体的な内容の公表(※5) | ● | ● | ||
6区分ごとにそれぞれ1つ以上取組(※6) | ● | ● |
- (※1)2024年度中は年度内の対応の誓約で可
- (※2)2024年度中は月額8万円の改善でも可
- (※3)2025年度から適用
- (※4)現行ベア加算未算定の場合のみ適用
- (※5)2024年度中は区分ごとに1以上で、公表は不要
- (※6)2024年度中は全体で1以上
新加算に係る提出期限は、計画書が4月15日、新加算(6月以降分)の体制届出は居宅系が5月15日、施設系が6月1日です(いずれも6月15日まで変更可)。
[参考]
厚生労働省「介護職員の処遇改善」
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