今回は、マイカーを通勤に利用させる際の留意点についての相談です。
当院は公共交通機関では通勤が不便な場所にあるため、職員のほとんどがマイカーで通勤しています。これまで特に何も管理していませんでしたが、最近事故が増えていることから、対策を検討しています。マイカーを通勤に利用させる際の留置点について教えてください。
職員がマイカー通勤の途中で事故を起こした場合、基本的には、その職員が被害者への賠償等を行うことになりますが、職員だけでは補償しきれないケースでは、使用者である医院に責任が及ぶ可能性があります。よって、マイカー使用の許可制の採用や任意保険加入ルールの設定・管理などが求められます。
1.マイカー通勤の許可制の採用
公共交通機関による通勤が困難であるなどの理由により、マイカー通勤を認めている医院は多いですが、その管理が不十分であったり、ルールが形骸化したりしてしまっていることが少なくありません。
万が一、通勤途上で事故が発生した場合、使用者である医院は、民法上の使用者責任と、自動車損害賠償保障法上の運行供用者責任に基づく賠償責任を負う可能性が考えられます。こうした責任を最小限に止めるためには、マイカー通勤を「許可制」とすることが重要です。また、その許可は口頭でなく、書面にて医院へ提出するというルールにし、誓約事項や、運転に関わる持病・体調等についても定期的に確認すると、より効果的でしょう。
2.マイカー通勤の管理体制
マイカー通勤の管理においては、就業規則等によりルールを明確化し、職員へ周知します。特に、任意保険へ加入とその定期的な確認は必ず行うようにしましょう。
そもそも事故を起こした職員が、十分な補償が受けられる任意保険に加入していれば、医院へ責任が及ぶことはまずありません。しかし、実際に事故が発生して確認すると、任意保険に加入していなかった、補償額が十分でなかった、補償期限が切れていたということがありえます。これらの事態を防ぐためにも、定期的に任意保険の保険証券等の写しを提出してもらい、それが医院の定めた補償額や補償範囲等の基準を満たしているか確認し、場合によっては、基準を満たすまではマイカー通勤を許可しないことも検討しましょう。
マイカー通勤は、勤務地によっては不可欠であることもあり、リスクはあっても認めざるを得ない場合が少なくありません。定期的な管理は大変ではありますが、事故によっては億単位の賠償が発生するケースもあります。職員が安心して通勤ができ、万が一の事故があっても医院がリスクを抱えることのないよう管理していくことが求められます。
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。